棋聖戦五番勝負第3局
2026年07月05日
7月1日、静岡県沼津市の「沼津御用邸東附属邸第1学問所」で、ヒューリック杯第97期棋聖戦五番勝負第3局が行われました。

舞台となった沼津御用邸は、明治時代に造営された由緒ある建物で、静かな松林に囲まれた落ち着いた空間が広がる。

歴史ある対局場らしい厳かな雰囲気の中で、朝9時ちょうどに対局開始。シリーズ2連敗と後のない服部七段に対し、あと1勝で防衛が決まる藤井棋聖という構図で、第3局は幕を開けた。
戦型は角換わり。第1局では変則的な展開を選択した服部七段でしたが、この日は藤井棋聖の得意戦法を真正面から受けて立ちます。序盤は互いに端歩を突き、右玉を目指す後手と、それを迎え撃つ先手という構図となります。さらに両者は金を何度も動かして細かな手待ちを繰り返し、一見すると盤面がほとんど変わらないようにも見える珍しい駆け引きが続きました。しかし、その一手一手には少しでも有利な条件で戦いを始めたいという高度な読みが込められており、トップ棋士同士ならではの神経戦が見て取れます。
最初の大きな転機は51手目の▲2六角。この角打ちは4筋へ照準を合わせ、「いよいよ仕掛ける」という藤井棋聖の明確な意思表示である。対する服部七段も△5二金と準備の一着を用意し、さらに△5五歩と中央から反発。事前研究の深さもうかがえる応手で、簡単には主導権を渡さない姿勢を示します。
続く▲4五歩から昼食休憩をまたいだ攻防は、この一局最大の見どころでしたね。藤井棋聖は26分考えて仕掛け、さらに昼食直前には残り時間を確認して休憩入りするなど、時間配分まで含めて非常に丁寧で落ち着いた指し回しを見せます。一方の服部七段も30分を超える長考を重ね、局面の均衡を保とうと懸命に読みを深めます。タイトル初挑戦とは思えない落ち着きで、王者に食らいつく姿が印象的でした。
午後に入り、流れを大きく引き寄せたのは61手目の▲5六歩だった。この局面は控室でも「急所」と見られていた一手で、△5六同歩に対して迷わず▲同銀と応じた構想力が光る。普通なら自ら打った4六の歩を飛車に取らせる進行は選びにくい。しかし藤井棋聖は、飛車を働かせても自陣の堅さと攻め駒の連携が勝ることを読み切っていた。
服部七段も52分の長考から△4六飛と踏み込み、勝負に出る。しかし、その瞬間から藤井棋聖の攻めは一気に加速。▲4五桂、▲5八飛と攻め駒を理想的な形に集結させると、「飛車・角・銀・桂」の4枚が中央で躍動し始めます。局後、控室でも「後手に決定打が見つからない」と検討されていたように、右玉の長所を生かす前に先手が主導権を完全に握ってしまった。こうなると後手は苦しい。
終盤はまさに藤井将棋の真骨頂でした。▲5四歩から▲5三歩成、▲5五金と攻めをつなぎ、さらに▲6四金で後手陣を圧迫。服部七段も粘り強く受け続けたが、▲7四歩が放たれた頃には寄せの形がほぼ完成していた。そして最後は▲7三歩成、△同銀に対し、鮮やかな▲7一角成。この一着を見届けた服部七段は静かに頭を下げ、「負けました」と投了を告げた。
藤井聡太棋聖が服部慎一郎七段を87手で破り、シリーズ3連勝で棋聖位防衛を決めました。最後まで大きな乱れを見せることなく、盤面全体を支配しながら勝ち切った内容でした。

これでこれで棋聖7連覇を達成し、齢23歳にして大山康晴十五世名人に並ぶ歴代2位タイの連覇記録となりました。羽生善治九段の10連覇という大記録にはまだ及ばないものの、その背中を確実に追い続けていること、更なる進化の途中にして偉大なレジェンドを追い越す可能性を十二分に秘めていることは疑いようが有りませんね。
シリーズは3連勝というスコアで決着したものの、全体を通して数字ほど一方的な内容ではなかったと思いました。服部七段は得意形ではない右玉を採用し、研究を尽くして王者に挑み続けたと思います。しかし、その準備をさらに上回る構想力と終盤力を見せたのが藤井棋聖だった。角換わりという最先端の将棋で主導権を握り、攻め駒を理想形へと導き、最後まで切れ味を失わない寄せで締めくくる――。棋聖7連覇という記録以上に、その完成度の高さを強く印象づけた一局でした。
《タカダ》

舞台となった沼津御用邸は、明治時代に造営された由緒ある建物で、静かな松林に囲まれた落ち着いた空間が広がる。

歴史ある対局場らしい厳かな雰囲気の中で、朝9時ちょうどに対局開始。シリーズ2連敗と後のない服部七段に対し、あと1勝で防衛が決まる藤井棋聖という構図で、第3局は幕を開けた。
戦型は角換わり。第1局では変則的な展開を選択した服部七段でしたが、この日は藤井棋聖の得意戦法を真正面から受けて立ちます。序盤は互いに端歩を突き、右玉を目指す後手と、それを迎え撃つ先手という構図となります。さらに両者は金を何度も動かして細かな手待ちを繰り返し、一見すると盤面がほとんど変わらないようにも見える珍しい駆け引きが続きました。しかし、その一手一手には少しでも有利な条件で戦いを始めたいという高度な読みが込められており、トップ棋士同士ならではの神経戦が見て取れます。
最初の大きな転機は51手目の▲2六角。この角打ちは4筋へ照準を合わせ、「いよいよ仕掛ける」という藤井棋聖の明確な意思表示である。対する服部七段も△5二金と準備の一着を用意し、さらに△5五歩と中央から反発。事前研究の深さもうかがえる応手で、簡単には主導権を渡さない姿勢を示します。
続く▲4五歩から昼食休憩をまたいだ攻防は、この一局最大の見どころでしたね。藤井棋聖は26分考えて仕掛け、さらに昼食直前には残り時間を確認して休憩入りするなど、時間配分まで含めて非常に丁寧で落ち着いた指し回しを見せます。一方の服部七段も30分を超える長考を重ね、局面の均衡を保とうと懸命に読みを深めます。タイトル初挑戦とは思えない落ち着きで、王者に食らいつく姿が印象的でした。
午後に入り、流れを大きく引き寄せたのは61手目の▲5六歩だった。この局面は控室でも「急所」と見られていた一手で、△5六同歩に対して迷わず▲同銀と応じた構想力が光る。普通なら自ら打った4六の歩を飛車に取らせる進行は選びにくい。しかし藤井棋聖は、飛車を働かせても自陣の堅さと攻め駒の連携が勝ることを読み切っていた。
服部七段も52分の長考から△4六飛と踏み込み、勝負に出る。しかし、その瞬間から藤井棋聖の攻めは一気に加速。▲4五桂、▲5八飛と攻め駒を理想的な形に集結させると、「飛車・角・銀・桂」の4枚が中央で躍動し始めます。局後、控室でも「後手に決定打が見つからない」と検討されていたように、右玉の長所を生かす前に先手が主導権を完全に握ってしまった。こうなると後手は苦しい。
終盤はまさに藤井将棋の真骨頂でした。▲5四歩から▲5三歩成、▲5五金と攻めをつなぎ、さらに▲6四金で後手陣を圧迫。服部七段も粘り強く受け続けたが、▲7四歩が放たれた頃には寄せの形がほぼ完成していた。そして最後は▲7三歩成、△同銀に対し、鮮やかな▲7一角成。この一着を見届けた服部七段は静かに頭を下げ、「負けました」と投了を告げた。
藤井聡太棋聖が服部慎一郎七段を87手で破り、シリーズ3連勝で棋聖位防衛を決めました。最後まで大きな乱れを見せることなく、盤面全体を支配しながら勝ち切った内容でした。

これでこれで棋聖7連覇を達成し、齢23歳にして大山康晴十五世名人に並ぶ歴代2位タイの連覇記録となりました。羽生善治九段の10連覇という大記録にはまだ及ばないものの、その背中を確実に追い続けていること、更なる進化の途中にして偉大なレジェンドを追い越す可能性を十二分に秘めていることは疑いようが有りませんね。
シリーズは3連勝というスコアで決着したものの、全体を通して数字ほど一方的な内容ではなかったと思いました。服部七段は得意形ではない右玉を採用し、研究を尽くして王者に挑み続けたと思います。しかし、その準備をさらに上回る構想力と終盤力を見せたのが藤井棋聖だった。角換わりという最先端の将棋で主導権を握り、攻め駒を理想形へと導き、最後まで切れ味を失わない寄せで締めくくる――。棋聖7連覇という記録以上に、その完成度の高さを強く印象づけた一局でした。
《タカダ》














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